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Mautic 構築ガイド

Mauticのインストール・構築手順と
“つまずき所”

Mauticの入れ方そのものは、公式ドキュメントに書いてあります。難しいのは「入れる」ことではなく「動き続けさせる」こと。実際に手が止まるのは、要件・cron・メール到達率・日本語書式の4か所です。公式の一次情報と、私たちがMautic 5.2.11の実ソースを読んで確かめた事実をもとに、どこで何につまずくのかを先に見せます。

最終更新:2026-07-17読了:約8分対象:Mautic 5系

01まず前提:共有レンタルサーバーでは動かない

最初につまずくのはここです。「WordPressが動いているサーバーがあるから、そこに入れよう」——これは失敗します。

Mautic公式は共有ホスティングを明確に非推奨とし、VPSまたは専用サーバーを求めています。理由は単純で、Mauticはcron(定期実行)とCLIコマンドを前提に設計されているからです。共有サーバーはcronの間隔・実行時間・メモリを厳しく制限することが多く、そこが制限されるとキャンペーンもセグメント更新もまったく動きません。画面は開くのに何も起きない、という一番タチの悪い壊れ方をします。

さらにインストーラー自体がmax_execution_time240秒以上求めます。多くの共有サーバーの既定値(30〜60秒)では、インストールの途中でタイムアウトします。

要点
Mauticは「WordPressプラグイン感覚」で入るソフトではありません。サーバーを1台、運用する覚悟が出発点です。ここを飛ばすと、後の工程すべてが崩れます。

02動作要件(2026年7月時点)

Mauticはバージョンごとに対応PHPが変わります。PHPのバージョンを間違えると、そもそもインストーラーが進みません。公式の要件ページの内容を整理すると次のとおりです。

Mauticバージョン対応PHP
7.08.2 / 8.3 / 8.4
6.08.1 / 8.2 / 8.3
5.28.1 / 8.2 / 8.3
5.18.0 / 8.1 / 8.2
5.08.0 / 8.1

そのほかの要件は次のとおりです。

項目要件つまずきポイント
データベースMySQL 5.7以上(InnoDB必須)/MariaDB 10.2以上MyISAMのままだと動かない
PHP拡張xml mysql imap zip intl curl gd mbstring bcmathimapintlが未導入のサーバーが多い
Node/npm5.0以降はnpmが必要(アセット生成)「PHPアプリだからNodeは不要」という思い込み
WebサーバーApache 2.x+/Nginx 1.0+(1.8推奨)/IIS 7URL書き換え(mod_rewrite等)の設定が要る
PHP設定max_execution_time 240秒以上既定値ではインストールが途中で落ちる
ホスティングVPS/専用サーバー(共有は非推奨)→ 01参照

なお、Mautic 5.1以降は管理者パスワードに複雑さが必須になりました。簡単なパスワードを入れてインストールが弾かれるのは、この仕様によるものです。

03インストールの4つの道

要件を満たすサーバーを用意できたら、入れ方は大きく4通りです。

  1. 公式パッケージ(zip)+ブラウザインストーラー環境チェック → DB設定 → 管理者作成 → メール設定、と画面に沿って進む一番やさしい道。ただし入った後の運用(cron・更新)は全部自分
  2. Composerプラグイン管理や更新をコード側で統制できる。開発者向け。バージョン固定やpatches/での改変管理をするならこちら。
  3. CLIインストールphp bin/console mautic:install [URL] --db_driver="pdo_mysql" ... の形。自動化・複数環境の払い出し向き。手作業を消したいならこれ。
  4. Docker公式イメージ(mautic/mautic:5.2-apache など)を使う。環境差異を消せるが、cron・永続ボリューム・メール設定は結局自分で組む必要がある。
補足
どの道を選んでも、ここから先の「つまずき所」は共通です。インストール方式は問題の8割を解決しません。むしろ本番は次の章からです。

04つまずき所①:cron ─ これが最大の罠

Mautic運用で最も多くの人が最初に踏む地雷がここです。インストールが成功して画面が開いても、cronを設定しなければキャンペーンは1通も動きません。セグメントにも人が入りません。エラーも出ません。ただ、何も起きないだけです。

必須のcron

公式が必須としているのは次の3本(+カスタムフィールド用の1本)です。

コマンド役割推奨間隔
mautic:segments:updateセグメントの対象者を最新化15分ごと
mautic:campaigns:updateキャンペーンの対象者を更新15分ごと(segmentsの5分後
mautic:campaigns:triggerキャンペーンのアクションを実行15分ごと(segmentsの10分後
mautic:custom-field:create-columnカスタムフィールドの列をDBに同期随時
最大の罠:同じ分に走らせてはいけない
公式は「これらのジョブは、まったく同じ分に実行しないよう“ずらす”ことを強く推奨」としています。同時に走らせるとリソースが競合し、処理が失敗します。「毎時0分に3本まとめて」は典型的な失敗設定です。しかも失敗は静かに起きるため、気づくのは「なぜかメールが送られていない」と顧客に言われた後になります。

ずらす、というのは具体的にはこういう形です。

# セグメント更新(毎時 0,15,30,45分)
0,15,30,45 * * * * php /path/to/mautic/bin/console mautic:segments:update

# キャンペーン対象更新(5分ずらす)
5,20,35,50 * * * * php /path/to/mautic/bin/console mautic:campaigns:update

# キャンペーン実行(10分ずらす)
10,25,40,55 * * * * php /path/to/mautic/bin/console mautic:campaigns:trigger

既定のバッチサイズはセグメント/キャンペーン更新が300件、キャンペーン実行が100イベントです。件数が増えると1回の実行が15分に収まらなくなり、前の実行が終わる前に次が動き出すという別の事故が起きます。規模が育つほど、間隔とバッチの調整が要ります。

メールのキュー送信:5系でコマンドが変わっています

ネットの日本語情報が古い箇所
メールをキュー送信にする設定の場合、Mautic 5系ではSymfony Messengerベースになり、使うコマンドは次です。

php bin/console messenger:consume email --time-limit=160

日本語のブログ記事の多くは、いまだに旧来の mautic:emails:send を紹介しています。5系の構成では、それは該当しません。古い手順をコピーして「キューに溜まったまま送られない」と悩む——これが非常に多いパターンです。

また、このコマンドは放っておくと動き続けるため、--time-limit--memory-limit--limit のいずれかで終了条件を必ず付けるのが公式の推奨です。付け忘れるとプロセスが残り続け、メモリを食い続けます。

状況に応じて要るcron

コマンド必要になる状況
mautic:broadcasts:sendセグメントへの一斉配信(ブロードキャスト)を使うとき
mautic:import大量のコンタクト/企業をバックグラウンドで取り込むとき
mautic:webhooks:processWebhookのバッチ処理を有効にしているとき
mautic:iplookup:downloadIP位置情報を使うとき(MaxMindは毎月第1火曜に更新=月次実行)
mautic:maintenance:cleanup --days-old=365 --dry-run古いデータの掃除(まず--dry-runで確認)

05つまずき所②:メールが届かない

cronが動き、キャンペーンが走り出すと、次の壁が来ます。送ったはずのメールが、迷惑メールに入る。あるいは届かない。

これはMauticの不具合ではなく、メール認証(SPF / DKIM / DMARC)の設定不足がほぼすべてです。特に、Amazon SESを使うとSPFは通るのにDMARCが落ちる「アライメントの罠」があり、ここは知らないとまず抜けられません。2024年からはGmail/Yahooの送信者要件も厳しくなり、認証が甘い送信は容赦なく弾かれます。

06つまずき所③:日本語が“直らない”

ここは、ネット上にほとんど正確な情報がない部分です。私たちはMautic 5.2.11の実ソースを実際に読んで確かめました。結論から言うと——日本語の言語パックを入れても、日本語対応は終わりません。

UIの訳自体は約95%進んでいます。問題は書式です。

項目実際の挙動(5.2.11で実測)直すには
氏名の順序既定は「名 姓」(太郎 山田)。姓名順オプションを使っても「姓, 名」=カンマ入り(山田, 太郎)にしかならず、日本式の「山田 太郎」にならない。しかもロケールjaで自動的に切り替わらないコード調整(難易度:中)
日付英語式が既定(July 12, 2026 3:45 pm JST設定変更のみ(難易度:低)
住所番地から先に出る西洋順(address1 → address2 → 郵便番号…)テンプレート上書き(難易度:中)
日本語UIイメージに同梱されるのはen_USのみ。jaはランタイムでダウンロードして導入する方式導入すればOK(難易度:低)

つまり、顧客に見せる画面で「太郎 山田」「July 12, 2026」と出続けるのが素のMauticです。日付は設定で直せますが、氏名はコードに手を入れないと直りません。そして手を入れれば、今度はアップグレードのたびに当て直す宿題を背負います。

07つまずき所④:アップグレード

Mauticは活発に更新されます。セキュリティ修正も出ます。放置は選択肢になりません——顧客のメールアドレスを預かっている以上、脆弱性を抱えたまま動かし続けるわけにはいかないからです。

しかし更新は、次の理由で「ボタンひとつ」になりません。

「入れて終わり」ではなく、年に数回、必ず手を入れる前提の運用だと理解しておくのが正解です。

08自前か、任せるか

ここまでの4つのつまずき所を、正直に並べます。自前でやるなら、これを全部引き受けるということです。

やること難易度終わりがあるか
VPS用意・要件を満たす環境構築あり(初回のみ)
cron設計(ずらし・バッチ調整)なし(規模が育つと再調整)
メール認証(SPF/DKIM/DMARC)なし(送信者要件は変わり続ける)
日本語書式の手当て中〜高なし(更新のたび当て直し)
アップグレード・バックアップなし(年に数回)

サーバー運用とメール認証を自分で回せる技術力と時間があるなら、自前は十分に合理的です。ライセンスは無料ですから、コストは自分の時間だけです。逆に、「MAで成果を出したい」のであって「サーバーを運用したい」わけではないなら、この5行は全部あなたの仕事ではありません。

費用の観点で比べるなら → Mauticは無料?料金・費用の“本当のところ” / 4つの選択肢を比べるなら → Mautic導入の4つの選択肢を比較

つまずき所、ぜんぶこちらで。

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よくある質問

Mauticは共有レンタルサーバーにインストールできますか?

公式が共有ホスティングを非推奨としており、VPSまたは専用サーバーが必要です。Mauticはcronとcronから呼ぶCLIコマンド、長時間実行(max_execution_timeで240秒以上)を前提にしているためで、これらを制限する共有サーバーではキャンペーンやセグメント更新が動きません。

Mautic 5に必要なPHPとデータベースのバージョンは?

Mautic 5.2はPHP 8.1・8.2・8.3に対応します(5.1は8.0〜8.2、6.0は8.1〜8.3、7.0は8.2〜8.4)。データベースはMySQL 5.7以上(InnoDB必須)またはMariaDB 10.2以上。PHP拡張はxmlmysqlimapzipintlcurlgdmbstringbcmathが必要で、5.0以降はアセット生成にnpmも要ります。

Mauticのcronは何を設定すればいいですか?

必須は mautic:segments:updatemautic:campaigns:updatemautic:campaigns:trigger の3本と、カスタムフィールド列を同期する mautic:custom-field:create-column です。公式は各15分間隔かつ「同じ分に実行しない」よう5分・10分ずらすことを強く推奨しています。cronが無いとキャンペーンもセグメントも一切動きません。

Mautic 5でメールのキュー送信に使うコマンドは?

Mautic 5系ではSymfony Messengerベースになり、messenger:consume email --time-limit=160 を使います。ネット上の日本語記事の多くが古い mautic:emails:send を紹介していますが、5系の構成では該当しません。無限に実行され続けないよう --time-limit--memory-limit の指定が推奨されます。

日本語の言語パックを入れれば日本語対応は完了しますか?

いいえ。UIの訳は約95%進んでいますが、書式は英語圏のままです。Mautic 5.2.11の実ソースを検証したところ、氏名は既定が「名 姓」で、姓名順オプションを使っても「姓, 名」とカンマが入り日本式になりません(しかもロケールjaで自動切替されません)。日付も英語式が既定、住所も番地から始まる西洋順です。日付は設定で直せますが、氏名はコード調整、住所はテンプレート上書きが必要です。

構築する時間がない場合の選択肢は?

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参考・出典

  1. Mautic 公式「Requirements」(対応PHP・DB・拡張・共有ホスティング非推奨)
    https://www.mautic.org/download/requirements
  2. Mautic 公式ドキュメント「How to install Mautic」(max_execution_time 240秒以上・CLIインストール・5.1以降のパスワード要件)
    https://docs.mautic.org/en/5.x/getting_started/how_to_install_mautic.html
  3. Mautic 公式ドキュメント「Cron jobs」(必須3本・15分間隔・ずらし推奨・バッチ既定値・messenger:consume・状況別ジョブ)
    https://docs.mautic.org/en/5.x/configuration/cron_jobs.html
  4. 日本語書式の挙動は、Nurtoが mautic/mautic:5.2-apache(実測5.2.11)のソースを直接検証(Lead.php::getName() / CoreBundle/Config/config.phpdate_format_* / lead.html.twig の住所ブロック / 同梱翻訳は en_US のみ)。
記載は2026年7月時点の公式情報および実測に基づきます。各ソフトウェアの仕様は変更される場合があります。導入判断の際は必ず最新の公式情報をご確認ください。Mauticは Mautic Inc. の商標です。本サービスは Mautic 公式および Mautic Inc. とは提携関係にありません。